意匠権と著作権について

 娘たちが使っている椅子は<トリップ トラップ(Tripp Trapp)>の真正品です。
 この椅子は北欧の子供用品メーカーのストッケ社が1972年から半世紀にわたり販売しています。
 例えば、コーヒーカップなど大量生産される日用品は意匠権で保護し、一品制作的な芸術品、茶道に用いる作家物の茶わんは著作権で保護。子供用の椅子は大量生産されるため意匠権で保護するのが「知財業界」の常識でした。
 ところがストッケ社は日本の家具メーカーを著作権侵害として提訴。一審の東京地裁は従来の常識に沿ってこの椅子は著作物ではないとして訴えを退けました。
 しかし二審の知財高裁は、意匠の保護対象を、著作物から除外するとの規定はないとして、この椅子が著作物であると判示しました。
 意匠権を保有していることは特許庁で謄本(1,100円)を取得すれば立証できます。一方、著作権は創作と同時に手続きなしで発生するため、自己の著作権は自ら主張立証しなければなりません。
 ストッケ社は「この椅子は2本脚で、部材Aと部材Bが66度の鋭角で・・・・・」と独創的なデザインであることを懸命に主張して著作物と認められました。しかし、被告の椅子は4本脚で、原告著作物と似ていないため侵害ではないと判断されました。平成26年(ネ)第10063号著作権侵害行為差止等請求控訴事件(平成27年4月14日判決)
 意匠権は取得に手間と費用が掛かりますが権利は堅固に保護されます。一方、著作権は手続きなしで発生しますが、いざ権利行使をするときに手間と費用がかかります。制度のメリット・デメリットを理解したうえで上手に活用したいものです。
 特に意匠登録制度は2020年4月に大幅に制度改正され、対象外だった「建築物の外観デザイン」や「内装」なども登録できるようになりました。関連意匠制度も変更され、存続期間が25年に延長されるなど大幅に変わっているのでご確認ください。

2021年09月06日