意匠第3回:意匠登録可能なデザインと不登録の例
意匠第3回:意匠登録可能なデザインと不登録の例
1. 意匠登録可能なデザインの条件
意匠登録を行うためには、法律で定められた一定の条件を満たす必要があります。これらの条件は、自社のデザインが意匠権を取得する資格があるかどうかを判断する際の重要な基準となります。以下、意匠登録可能なデザインの3つの主要な条件について解説します。
(1) 新規性
• 新規性とは、そのデザインが「新しい」ことを意味します。意匠登録を受けるためには、世界中で公然と知られていないデザインであることが必要です。
• 具体的には、製品が公に公開されていないこと(展示会やウェブサイトでの発表も含む)、または他社が既に製造・販売していないことが条件となります。
ポイント: デザインを公表する前に必ず意匠出願を行いましょう。先に公開してしまうと「新規性」を失い、意匠登録が認められなくなる可能性があります。
(2) 創作性
• 創作性は、そのデザインが独自性を持っており、既存のデザインから容易に考え出されるものではないことを求めます。
• 例えば、既存のデザインの色を単純に変えたり、模様を少し追加したりしただけでは創作性が認められません。
例: 市販されている既存の四角い箱型のランプに、単に赤い色を塗った場合は創作性がないと判断されます。一方で、曲線美を生かした斬新な形状や独特な配色パターンを持つランプであれば創作性が認められる可能性が高まります。
(3) 工業上の利用可能性
• 意匠登録の対象は「工業的に量産可能なデザイン」に限られます。つまり、1点物の美術品や製作困難なデザインは登録対象外です。
• 具体例として、家具、家電、包装容器などの量産が見込まれる製品はこの条件を満たします。
例: 手作り感を重視した一点物の陶芸作品は対象外ですが、その形状や模様を量産する商品として展開する場合には意匠登録の対象となります。
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2. 登録が認められないケース
次に、意匠登録が認められない例をいくつか紹介します。これらは、条件を満たしていない、または法律で登録が禁じられている場合に該当します。
(1) 公知デザイン
• 出願前に既に知られているデザインは「新規性」を失っているため、意匠登録の対象にはなりません。
• 公知デザインには、自社が公開してしまったデザインも含まれるため注意が必要です。
例: 他社が既に市場で販売しているデザインや、SNSやカタログで公開されたデザイン。
(2) 純粋に機能目的のデザイン
• 製品の機能を果たすためだけに作られた形状は、意匠登録の対象外です。デザイン性が感じられる場合にのみ登録可能となります。
例: 機械部品の単純な形状や、純粋に水の流れを制御するための配管デザイン。
(3) 公序良俗に反するデザイン
• 法律や道徳に反する内容を含むデザインは登録が認められません。
• 例えば、差別的表現や不快感を与える模様などがこれに該当します。
(4) 既存の意匠と類似するデザイン
• 他社が既に登録した意匠と非常に似ているデザインは、創作性が否定されるため登録できません。
• 特に競合製品と類似点が多いデザインは注意が必要です。
例: 既存の意匠権を持つスマートフォンケースに似た形状・色彩を持つ新製品。
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3. 意匠登録の可能性を高めるために
中小企業が自社のデザインを意匠登録する際、事前に以下の手順を踏むと登録の可能性が高まります:
1. 事前調査を徹底する
• 特許庁のデータベースや商標調査ツールを活用し、類似デザインが登録されていないか確認する。
2. 公開タイミングを慎重に検討
• 展示会やSNSで発表する前に意匠登録の出願を行うこと。
3. 専門家に相談
• 特許事務所や知財専門家である弁理士のアドバイスを受けることで、申請の手続きや内容の精度が上がります。
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次回予告
次回は、「意匠登録出願の流れと手続き」と題して、意匠登録を行う際に必要な準備や具体的なプロセスについて詳しく解説します。意匠権を取得するための実務的なポイントをお伝えしますので、ぜひご期待ください!