実用新案第3回:実用新案権の取得までの流れと申請手続き

実用新案第3回:実用新案権の取得までの流れと申請手続き
 実用新案登録制度は、特許に比べて簡易かつ迅速に新しい技術やアイデアを権利化できる点が大きな特徴です。しかし、スムーズに出願を進めるためには、手続きの流れを正確に把握し、必要な書類や要件をしっかりと準備することが重要です。この記事では、実用新案権の取得に必要なプロセスと、具体的な申請手続きの流れを詳しく解説します。
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実用新案権取得の基本プロセス
 実用新案権の取得プロセスは、大きく分けて以下のステップで進行します。
1. 出願前の準備
2. 書類の作成
3. 特許庁への出願
4. 出願後の手続き
5. 実用新案権の取得
 以下、それぞれのステップについて具体的に解説します。
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1. 出願前の準備
 実用新案の出願準備では、権利化を目指す技術やアイデアの内容を整理し、実用新案の対象範囲に該当するか確認します。
1.1 技術内容の整理
 実用新案の保護対象は「物品の形状、構造、組み合わせ」に限定されます。そのため、自社のアイデアがこの条件を満たしているかどうかを確認しましょう。対象外のアイデア(たとえば製造方法や化学物質)は、特許出願を検討する必要があります。
1.2 先行技術調査
 出願前に、既存の技術やアイデアと重複していないかを確認します。この作業は、特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を活用して、類似する実用新案や特許を調査することで行えます。
1.3 出願戦略の検討
 実用新案は、特許に比べて簡易な制度である一方、権利行使時には「技術評価書」が必要です。そのため、将来的な利用目的を明確にし、特許との使い分けを検討します。
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2. 書類の作成
 出願には以下の書類が必要です。これらを正確に作成することが重要です。
2.1 出願書
 出願者情報(氏名、住所など)や、出願の目的などを記載した書類です。
2.2 明細書
 考案の技術内容を詳細に説明する書類です。明細書には以下の要素が含まれます。
 • 考案の名称: 技術やアイデアを端的に示す名称。
 • 背景技術: 既存技術の問題点や、それに対して新たに解決しようとする課題。
 • 考案の効果: 提案する技術がどのような利点を持つのか。
2.3 実用新案登録請求の範囲
 考案がどのようなものなのか、第三者が見ても分かるように、「請求項」ごとに具体的な言葉で簡潔に記載します。ここに記載した「請求項」が権利の範囲となるため最重要の項目です。
2.4 図面
 技術内容を視覚的に示す図面です。形状や構造、組み合わせを具体的に説明するための重要な資料となります。
2.5 要約書
 考案内容を簡潔にまとめた文章(約400字程度)です。この要約は、出願された技術の内容を簡単に理解するためのもので、考案の技術的範囲の認定では参考にされません。
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3. 特許庁への出願
 書類の準備が整ったら、特許庁に出願します。以下は、出願手続きの具体的な内容です。
3.1 出願方法
 出願は、オンラインまたは紙ベースで行えます。電子出願を利用すると、効率的かつ迅速に手続きが進められます。
 • オンライン出願: 特許庁の電子出願ソフトを利用。
 • 紙出願: 出願書類を印刷して特許庁に郵送または直接提出。
3.2 出願料の支払い
 実用新案の出願には、所定の手数料を支払う必要があります。2024年現在の基準では、出願料は約14,000円程度です(変動の可能性があるため、最新情報を確認してください)。
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4. 出願後の手続き
 実用新案制度では、特許と異なり、実体審査が行われません。出願内容が所定の形式を満たしていれば、比較的短期間で登録されます。
4.1 補正や意見書の提出
 出願内容に不備がある場合、特許庁から補正の指示を受けることがあります。この場合、必要な修正を行い、再提出します。
4.2 登録料の支払い
 出願が受理された後、登録料を支払う必要があります。登録料は出願から3年分を一括で支払う形式が一般的です。
4.3 登録証の交付
 登録料の支払いが完了すると、実用新案権が付与され、特許庁から登録証が交付されます。この時点で、技術内容が正式に保護されます。
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5. 実用新案権の維持
実用新案権の存続期間は出願日から最長10年です。期間内に権利を維持するためには、年ごとの登録料を支払う必要があります。登録料の納付を怠ると、権利が失効してしまうため注意が必要です。
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実用新案の出願での注意点
以下は、出願を進める際に注意すべきポイントです。
1. 事前調査の徹底
先行技術調査を怠ると、登録後に他社から無効審判を請求されるリスクが高まります。登録前の調査は重要です。
2. 明細書の精度
明細書や図面の内容が不十分だと、登録後に権利の範囲を主張できない場合があります。専門家(弁理士)に相談するのも一つの方法です。
3. 技術評価書の取得
実用新案は、他社に権利行使をする際に技術評価書が必要です。そのため、出願段階でこの点を考慮し、評価書の取得を見据えた明確な書類記載を行うことが重要です。
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中小企業経営者へのアドバイス
 中小企業にとって、実用新案はコストを抑えつつ技術を保護するのに適した制度です。ただし、出願手続きやその後の権利行使には専門的な知識が必要な場合もあります。弁理士に相談しながら進めると、より効果的な活用が可能です。
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まとめ
 実用新案権の取得は、比較的シンプルな手続きで進めることができますが、出願前の準備や書類の精度が成功のカギを握ります。特に、明細書や図面の作成において技術内容を正確かつ詳細に記載することが重要です

2025年01月10日