財務諸表第2回(初級編)
初級編 第2回: 貸借対照表(B/S)を徹底解説
貸借対照表(Balance Sheet: B/S)は、企業の財務状況を「資産」「負債」「純資産」の3つに分けて整理した表です。B/Sを読み解くことで、会社がどれだけの財産を持っているか、借入状況はどうか、財務体質が健全かどうかを把握できます。今回は、貸借対照表の基本構造や分析方法について具体的に解説し、中小企業の経営にどのように役立てられるかを考えていきます。
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1. 貸借対照表の基本構造
(1) 貸借対照表とは?
貸借対照表は、ある時点における企業の財務状況を表す表で、以下のような構成になっています:
• 資産: 企業が「持っているもの」(現金、設備、在庫など)。
• 負債: 企業が「返済しなければならないもの」(借入金、買掛金など)。
• 純資産: 資産から負債を引いた残り、つまり「会社の自己資本」。
(2) 資産、負債、純資産の関係
貸借対照表は以下の関係で成り立っています:
資産=負債+純資産
• 例:
ある会社が現金1,000万円、借入金500万円を持っている場合、純資産は500万円です。
資 産 | 負 債 |
---|---|
1000万円 | 500万円 |
純資産 | |
500万円 |
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2. 各項目の具体的な内訳
(1) 資産
資産は、さらに流動資産と固定資産に分けられます。
① 流動資産
短期間(1年以内)で現金化される、または使われる資産を指します。
• 例:
o 現金や預金
o 売掛金(取引先からの未回収代金)
o 在庫(商品や原材料)
• ポイント: 流動資産の額が多いほど、短期的な資金繰りが安定していることを示します。
② 固定資産
長期間にわたって使用される資産を指します。
• 例:
o 建物や設備
o 土地
o ソフトウェアや特許権
• ポイント: 固定資産は収益を生み出すために必要な設備や投資の状態を示します。
(2) 負債
負債も、流動負債と固定負債に分けられます。
① 流動負債
1年以内に返済が必要な負債を指します。
• 例:
o 買掛金(仕入先への未払い代金)
o 短期借入金(返済期限が1年以内の借入金)
o 未払費用(未払いの家賃や利息など)
• ポイント: 流動負債が大きすぎる場合、短期的な資金繰りが厳しい可能性があります。
② 固定負債
1年以上にわたって返済義務がある負債を指します。
• 例:
o 長期借入金
o 社債
• ポイント: 固定負債は、長期的な資金調達の状態を示します。
(3) 純資産
純資産は、企業の自己資本を表します。外部からの借入ではなく、企業自身の資金です。
• 例:
o 資本金(設立時や増資時に出資された額)
o 利益剰余金(過去の利益の積み上げ)
• ポイント: 純資産が大きいほど、財務的に安定した企業と評価されます。
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3. 貸借対照表から読み解けること
貸借対照表を読むことで、以下の点を把握できます:
(1) 会社の財産状況
資産の内容を確認することで、会社がどれだけの財産を保有しているかを把握できます。
• 流動資産が多ければ短期的な資金繰りが安定。
• 固定資産が多ければ、設備投資に積極的な企業といえます。
(2) 借入状況
負債の内訳を確認することで、どのくらいの借入があるかがわかります。
• 流動負債が大きいと短期的な返済負担が重い。
• 固定負債が多いと長期的な資金繰りの計画が重要です。
(3) 資本力
純資産の割合を確認することで、会社の財務的な安定性を判断できます。
• 純資産が大きいほど、借入に依存しない健全な経営体制。
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4. 貸借対照表の基本的な分析方法
貸借対照表の数字を用いて、会社の安全性や効率性を分析する方法を紹介します。
(1) 流動比率
流動比率は、短期的な支払い能力を示す指標です。
流動比率=流動資産流動負債×100
• 目安: 流動比率が100%以上であれば、短期的な支払い能力があるとされます。
• 例: 流動資産が1,200万円、流動負債が800万円の場合、流動比率は150%です。
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(2) 固定比率
固定比率は、純資産に対する固定資産の割合を示す指標です。
固定比率=純資産固定資産×100
• 目安: 固定比率が100%以下であれば、純資産で固定資産を賄えている健全な状態。
• 例: 固定資産が900万円、純資産が1,000万円の場合、固定比率は90%です。
(3) 自己資本比率
自己資本比率は、総資産に占める純資産の割合を示します。
自己資本比率=総資産純資産×100
• 目安: 自己資本比率が50%以上であれば財務的に安定しているとされます。
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まとめ
貸借対照表は、企業の財務状況を総合的に把握するための重要なツールです。資産、負債、純資産の関係やそれぞれの内訳を理解し、基本的な分析指標を活用することで、自社の強みや課題を明確にできます。