財務諸表第3回(初級編)
初級編 第3回: 損益計算書(P/L)を徹底解説
企業の収益力や経営成績を示す「損益計算書(Profit and Loss Statement: P/L)」は、経営者にとって最も身近で重要な財務諸表の一つです。売上や利益を基に事業の成果を把握し、改善点を特定するために欠かせないツールです。本稿では、損益計算書の基本構造や重要な項目、分析方法について解説します。日々の経営判断に活用するための実践的なアドバイスも紹介します。
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1. 損益計算書(P/L)とは?
損益計算書は、一定期間(通常1年や1か月)の企業活動を通じた収益と費用をまとめたものです。この財務諸表を見ることで、会社が利益を出せているか、あるいは赤字なのかを把握できます。
(1) 損益計算書の役割
損益計算書は、以下の点を経営者に示します:
• 収益性: 会社がどれだけ利益を生み出しているか。
• 費用構造: 何にコストがかかり、どのように利益が生じているか。
• 経営成績の把握: 成長しているのか、改善が必要なのか。
(2) P/Lの基本構造
損益計算書は、大きく以下の5つの段階で構成されています。
① 売上高
• 意味: 会社の主たる事業で得た収益。
• 例: 商品販売、サービス提供による売上。
② 売上原価
• 意味: 商品やサービスを提供するために直接かかったコスト。
• 例: 材料費、人件費(製造に関わる部分)。
③ 売上総利益
• 計算式: 売上高 - 売上原価
• 意味: 商品やサービスそのものの収益性を表す指標。
④ 営業利益
• 計算式: 売上総利益 - 販管費(販売費および一般管理費)
• 意味: 本業の営業活動から生まれる利益。会社の基礎的な収益力を示す。
• 例: 広告費、営業人員の給与、事務所の家賃などが販管費に含まれる。
⑤ 経常利益
• 計算式: 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
• 意味: 本業以外の収益や費用を含めた経常的な利益。
• 例: 株式配当(営業外収益)や借入金利息(営業外費用)。
⑥ 当期純利益
• 計算式: 経常利益 - 特別損益 - 法人税等
• 意味: 一定期間の最終的な利益。株主への還元や内部留保に充てられる。
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2. 損益計算書から読み解けること
損益計算書を分析することで、以下の重要な経営情報を得られます。
(1) 収益性の把握
• 売上高の推移: 売上高が前年や月ごとに増加しているかを確認します。
• 売上総利益率: 商品やサービスそのものの収益力を判断する指標。
o 計算式: 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
(2) 費用構造の分析
• 販管費や売上原価が高い場合、無駄なコストが含まれていないかを確認します。
• 営業利益が低い場合、販管費の見直しが必要です。
o 例: 広告費を削減しても売上が維持できるか検討する。
(3) 利益率の評価
• 各利益率(営業利益率、経常利益率、当期純利益率)を計算し、業界平均や過去の実績と比較します。
(4) 経営改善のヒント
損益計算書からわかる課題を特定し、改善策を考えることができます。
• 例:
o 原価率が高い場合:仕入れコストを見直す。
o 売上が伸び悩む場合:販促活動の強化を検討する。
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3. P/L分析の基本指標
損益計算書を読み解く際に役立つ主要な指標を紹介します。
(1) 売上総利益率
• 計算式: 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
• 意味: 商品やサービスそのものの収益性を示す指標。
• 目安: 業種によるが、30~50%が一般的。
(2) 営業利益率
• 計算式: 営業利益 ÷ 売上高 × 100
• 意味: 本業の収益性を示す指標。
• 目安: 業種により異なるが、10%を超えると高収益とされる。
(3) 経常利益率
• 計算式: 経常利益 ÷ 売上高 × 100
• 意味: 本業以外も含めた経常的な利益率を示します。
• 目安: 借入金が多い企業では経常利益率が低くなる傾向があります。
(4) 当期純利益率
• 計算式: 当期純利益 ÷ 売上高 × 100
• 意味: 会社の最終的な利益率を表します。
• 目安: 5%前後が目標値となることが多いです。
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4. P/Lを活用した経営改善の実例
(1) 原価率の改善
• 問題: 売上原価が高く、売上総利益率が低い。
• 改善策:
o 仕入れ先の見直しや一括発注によるコスト削減。
o 生産工程の効率化。
(2) 販管費の削減
• 問題: 広告費や人件費が増え、営業利益が減少。
• 改善策:
o 効果が薄い広告を停止し、効果的な媒体に集中投資。
o オーバーヘッドコスト(間接費用)の見直し。
(3) 借入金利息の削減
• 問題: 借入金が多く、経常利益率が低い。
• 改善策:
o 不要な資産を売却し、借入金の返済に充てる。
o 金利の低い借り換え先を探す。
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まとめ
損益計算書(P/L)は、会社の収益性や経営成績を把握するための重要なツールです。売上、費用、利益の構造を理解し、主要な指標を使って分析することで、経営改善の具体的なヒントを得られます。次回は、キャッシュフロー計算書(C/F)について解説し、資金繰りの重要性や活用方法を考えます。