著作権(第10回)キャラクターと著作権などとの関係

第10回 キャラクターと著作権などとの関係

はじめに
前回は、クリエイターが自身の著作権を守るために必要な知識と対策について解説しました。今回は、クリエイターが生み出す魅力的な「キャラクター」に焦点を当て、キャラクターが著作権によってどのように保護されるのか、そして商標権や意匠権といった他の知的財産権との関係についても詳しく解説していきます。
キャラクターは、漫画、アニメ、ゲーム、商品など、様々な分野で活用され、大きな経済的価値を生み出すことがあります。そのため、キャラクターの権利を適切に保護することは、クリエイターや事業者の重要な課題となります。本稿では、キャラクターの著作権による保護の範囲、他の知的財産権との連携、そしてキャラクター利用における注意点について解説します。


1. キャラクターの著作権による保護
(1)著作物としてのキャラクター
 キャラクターは、一般的に美術の著作物として著作権法によって保護されます。キャラクターの具体的な絵柄、デザイン、表情、ポーズなどは、著作者の思想や感情が創作的に表現されたものと認められるためです。
 ① 保護の対象:キャラクターのイラスト、漫画の登場人物の絵柄、アニメーションのキャラクターデザインなどが保護の対象となります。 ② 保護の範囲:著作権による保護は、具体的な絵柄やデザインといった表現に及びます。キャラクターのアイデアやコンセプト、単なる名前などは、原則として著作権の保護対象とはなりません。
(2)ストーリーや設定との関係
 キャラクターは、単独で存在するだけでなく、物語や世界観、性格設定などと結びついていることが多くあります。これらの要素も、著作権によって保護される可能性があります。
 ① ストーリー:キャラクターが登場する物語の筋書きや展開は、文芸の著作物として保護されます。 ② 設定:キャラクターの性格、能力、背景設定などは、アイデアの範疇にとどまる場合は保護されませんが、具体的な記述や表現として創作的に表現されている場合は、文芸の著作物の一部として保護されることがあります。
(3)保護期間
 キャラクターの著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年間です。もしキャラクターが法人によって創作された場合は、公表後70年間となります。


2. キャラクターと他の知的財産権
 キャラクターの保護は、著作権だけでなく、他の知的財産権とも深く関わっています。
(1)商標権
キャラクターは、商品やサービスの識別標識として利用されることが多く、その場合、商標権による保護が重要となります。
① 商標登録の対象:キャラクターの名称、絵柄、ロゴなどが商標登録の対象となります。 ② 保護の範囲:商標権は、商品やサービスを指定して登録されるため、登録された商品・サービスの範囲内で、キャラクターの使用を独占できます。 ③ 著作権との違い:著作権は表現そのものを保護するのに対し、商標権は商品やサービスの出所を示す標識としての機能を保護します。同じキャラクターであっても、著作権と商標権の両方による保護を受けることが可能です。
(2)意匠権
キャラクターのデザインが、商品の外観として独創性を有する場合、意匠権による保護を受けることができます。
① 意匠登録の対象:物品の形状、模様、色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものが意匠登録の対象となります。キャラクターの立体的なフィギュアや、キャラクターがデザインされた商品などが該当します。 ② 保護の範囲:意匠権は、登録された物品のデザインそのものを保護します。 ③ 著作権との違い:著作権は創作的な表現を広く保護するのに対し、意匠権は物品の具体的な外観デザインを保護します。
(3)不正競争防止法
著作権、商標権、意匠権による保護を受けられない場合でも、著名なキャラクターについては、不正競争防止法によって保護されることがあります。他者の著名な商品等表示(キャラクターを含む)と類似する表示を使用し、需要者の混同を生じさせる行為などは、不正競争防止法によって禁止されます。


3. キャラクター利用における注意点
(1)二次利用の許諾
自身の創作したキャラクターを他者に利用させる場合(商品化、ゲームへの登場など)、**著作権利用許諾契約(ライセンス契約)**を締結する必要があります。契約においては、利用範囲、期間、対価などを明確に定めることが重要です。
(2)商標登録の検討
キャラクターを商品やサービスの展開に利用する場合は、商標登録を検討することで、他者による無断利用を防ぎ、ブランド価値を保護することができます。
(3)権利侵害への対応
自身のキャラクターが第三者によって無断利用されている場合、差止請求や損害賠償請求などの法的措置を検討する必要があります。証拠を収集し、弁護士などの専門家に相談することが重要です。
(4)海外での権利保護
海外でキャラクターを利用する場合は、その国の著作権法や商標法などの知的財産法に基づいて権利保護を行う必要があります。国際的な権利保護の仕組み(例:マドリッド協定議定書による商標の国際登録)も検討しましょう。


4. キャラクターの創作と著作権侵害
 他者の著作物であるキャラクターに類似したキャラクターを創作した場合、著作権侵害となる可能性があります。
(1)類似性の判断
 著作権侵害の判断においては、類似するキャラクターの表現が実質的に同一であるかどうかが重要なポイントとなります。アイデアやコンセプトが類似しているだけでは、著作権侵害とは認められにくいです。
(2)意図的な模倣の有無
 意図的に他者のキャラクターを模倣した場合、著作権侵害と判断される可能性が高まります。
(3)オリジナル性の確保
 キャラクターを創作する際には、既存のキャラクターに類似しないよう、独自のアイデアや表現を取り入れることが重要です。創作の過程を記録に残しておくことも、将来的な紛争予防に繋がります。


むすび
 今回は、キャラクターと著作権、そしてその他の知的財産権との関係について解説しました。キャラクターは、著作権によってその具体的な表現が保護され、さらに商標権や意匠権によって商品やサービスとの結びつきやデザインが保護されることがあります。
 自身の創作したキャラクターの権利を適切に保護し、活用するためには、これらの知的財産権の特性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。また、他者のキャラクターを利用する際には、著作権をはじめとする関連する権利を尊重する姿勢が求められます。
 次回のテーマは「著作権侵害とその対処法:どう対応すべきか?」です。実際に著作権侵害が発生した場合に、権利者がどのように対応すべきか、具体的な手続きや注意点について解説していきます。

2025年07月04日